俳句『麦の会』on HatenaBlog

『麦の会』俳句結社。俳句雑誌『麦』を毎月発刊。

『収穫祭』第1位作品(R6年度)

『収穫祭』第1位作品(R6年度)

 

さくら咲く    大和田富美

 

両腕の翼に変わる夢二日

おもむろによろけたる独楽ギブアップ

ものの芽の祈りのポーズ土鳩啼く

子に咲いた電文さくら春暑し

生れ日の同じ光栄斌雄の忌

菜の花や車窓に展く昏い昼

産声は武将のような囀り

思いきって言うありがとうさくら咲く

はつなつのフラはやさしく風を抱き

鬼灯や呆けし口の阿形なす

薄暮砂場のトンネル崩れおり

水塊の白極まりし瀑布かな

親ゆえの悩みありけり夜の金魚

吊り橋に生るる恋あり夏の果

己が囲に己が屍曝す蜘蛛

原爆忌熱き心を折って鶴

人に頼る味を覚えた敬老日

愛と憎深きふるさと水澄めり

踊りまた輪にならず闇やわらかし

プラダ着て鬱の頂点つくつくし

蜉蝣の舞えば聞こゆるラプソディ

秋さぶや話の接ぎ穂探しおり

金火箸もてととのうる火の形

五校時を眠る少年冬の蠅

基坂(もといざか)は教会小路雪降れり

嗚咽その震える肩に寒灯

衆の中の孤が好き冬の鵙が好き

子の視野にわれあらず餅ふくれだす

太郎に次郎にわたしに雪降りだす

十二月痒いところに届いた手