俳句『麦の会』on HatenaBlog

『麦の会』俳句結社。俳句雑誌『麦』を毎月発刊。

第41回(令和6年度)麦新人賞受賞作品

第41回(令和6年度)麦新人賞受賞作品

 

道化師のギャロップ    坂田晃一

 

寝そべれば人のくぼみや鰯雲

人透けるための焼酎月夜茸

冬の没日は海へと帰る鯨の背

万華鏡どの鏡面も鳩潜る

慟哭のかたちに開き革手袋

人間の手足繰る糸神渡し

料峭や膨らむ火玉壺となり

染めてゆく真白さ塑像鳥の恋

かたくりの見下ろす人の世は突風

心臓は恋せぬ臓器ソーダ

宵宮の恋仕舞うなら紙の箱

雲の峰ヒエログリフの家鴨呼ぶ

マンタ来る青き光りの冷蔵庫

青薄何見て石となりし人

生きているように打つ水猫の坂

烏瓜咲いて小さき葬とおる

はしびろこう西日の御簾の裡に居る

道化師のギャロップ霧の樹間まで

旧道を風の預言者秋の蝶

喉鳴らし銀漢の水飲む馬よ

 

第69回(令和6年度)麦作家賞受賞作品

第69回 麦作家賞 受賞作品(以下の二名が受賞)

 

詫状    岡崎久子

 

思惟の手を解けぬ菩薩や夕桜

万緑と仏に抱かれ旅三日

止みて降る緑雨が洗う神の山

十五夜のうさぎが夢であったころ

東京にふるさとの葱暮れ残る

不確かな決意ふわりと春の雪

手のひらの招待状は花野から

まだわが血濃しびっしりと実南天

詫状を添えし精霊舟を押す

まなうらに十二単の夏の蝶

光堂のひかりを集めあやめ園

いつの間に虫の夜となりたる不安

掛軸の山河を畳む一月尽

追伸に追伸重ね鳥帰る

新緑にスカイツリーを活ける木場

シーソーの端地に着きしまま秋に

乱筆をポストに落す秋の風

また人を信じてしまうかいつぶり

夜も家の中透き通る夏座敷

年取らぬ父母といっしょに盆用意

 

 

鯨よ    鋤柄杉太

 

時止まりたれば美し水の春

老人にメメント・モリと囀りぬ

涅槃図に描いて我を見ておりぬ

蛇出でし処は人のいない里

ひとりの午後を陽炎になっている

海市より帰る途中が折れ曲る

六月の方解石のような朝

ターヘル・アナトミア原っぱを蛍

谷遡る山椒魚の渇き

月光を積み沈みゆく地中海

月明の砂漠に風の舟を置く

ロボットの足首の街赤い羽根

流星の時計の遅れ少年期

胸中に凩毀れたる記号

冬の雨楷書の反故が増えてゆく

静かなるヴァニタス冬の蝶の息

かなしみの質量宙へ波の花

無機質の街に無機質の雪が降る

寒雷や初めにありし言葉とは

鯨よ海に始まっている相転移

 

俳句雑誌『麦』2025年7•8月号(通巻870号)

俳句雑誌『麦』2025年7•8月号(通巻870号)

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★「衣更」        対馬康子(5句)
 
蛍火は星の崩れる夜に降る
 
★特別作品(各10句〕

 

 「潮騒」         美馬順子

水平線藍を深めて波朧

潮騒の名残りの余生後の月

 

 「新宿御苑吟行」     望月哲土

 

日常の無事が何より花八手

造形に人臭くなる菊の色

 

​★地熱深耕   地熱集より対馬康子選
 
​初蝶の声だけにある半母音    尾内以太

菜の花の群衆が揺れ齟齬が揺れ  田中朋子

春愁を閉じ込める貝舌を出す   中村安子

 
​★踏生集   同人自薦作品5句

 

★第69回麦作家賞(令和6年度)受賞作品

  「詫状」              岡崎久子  

  「鯨よ」              鋤柄杉太

 

★第41回麦新人賞(令和6年度)受賞作品

  「道化師のギャロップ」  坂田晃一 

 

​★原生林(俳句教室)  斉田 仁 選


 いくたびもおろそかに見しかいやぐら  早川浩
 
★誌上句会・・・四人の選者が交代で読む・選ぶ
 
​選者   武内杉菜

テーマ「色」
 
白たんぽぽ少年の日の子が笑う  中村せつ

耳がさみしい色即是空梅真白   燕北人空

江の明けて青梅苔滑りゆく汽水  町田博嗣
 
その他
 
 
♫見本誌(無料)を進呈しています。♫

下記へお申し込みください。

〒343-0026
越谷市北越谷3-12-6 藤井方 麦の会発行所
 
メールでのお問い合わせ(見本誌含む)
中山宙虫
sorandatte.dayo@ymail.ne.jp

俳句雑誌『麦』2025年6月号(通巻869号) 

俳句雑誌『麦』2025年6月号(通巻869号) 

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★「さくら」      対馬康子(5句)

 

木霊なす枝垂桜の群青へ

 
★特別作品(各10句)

 

「花守」        佐々木洋子

 

新緑の風は無糖でやわらかで

長生きのいま花守をすることに

 

「九月の声」      大石壽美

 

どこからも見えない九月四角形

まだ未来持つ片手あり九月往く

 

​★地熱深耕   地熱集より対馬康子選

 

少年の羽音に溶ける春の昼     阿川朔子

早春を鳩は首から歩き出す     笠井亞子

花山茱萸トランペットは空を向く  角地令子

 
​★踏生集   同人自薦作品5句
 
​★原生林(俳句教室)  斉田 仁 選
 
春雨にけぶり叡山そこに在り    吉田 祥
 
★誌上句会・・・四人の選者が交代で読む・選ぶ
 
​選者   野川 京
テーマ「度」
 
三月の火度見極むる小窓かな   梅木俊平

春愁の積もりて下がる温度計   米倉実千子

地球儀の斜度受け止めて春一番  上田昭子
 
 その他
 
 
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俳句雑誌『麦』2025年5月号(通巻868号) 

俳句雑誌『麦』2025年5月号(通巻868号) 

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★「水温む」      対馬康子(5句)

 

悼滝浪武さん

鳥帰るひかりを食べてしまいしと

 
★特別作品(各10句)

 

「秋思抛雲髻」     斉田 仁

 

アンデルセンの絵のない絵本色なき風

父の忌のややひん曲がる瓜の馬

 

「大根の花」      尾原 葛

 

もたれあって今を生き切る星月夜

明日立冬脳トレパズル延々と

 

​★地熱深耕   地熱集より対馬康子選

 

速やかに木霊を返し山眠る    笹木 弘

心臓も眼も無き海鼠夢を見る   大槻泰介

壊れゆくまでは人間雪だるま   森田千技子

 
​★踏生集   同人自薦作品5句
 
​★原生林(俳句教室)  斉田 仁 選
 
雪しまく魘され眠る被災の児   燕北人空
 
★誌上句会・・・四人の選者が交代で読む・選ぶ
 
​選者   徳山優子
テーマ「思」
 
夕凍みの思い出やがて歪みだす  竹下潤

畳みたる日の丸のごと年の餅   坂田晃一
ふと思う楔形文字夜のおぼろ   越川ミトミ
 
 
その他
 
 
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俳句雑誌『麦』2025年4月号(通巻867号) 

俳句雑誌『麦』2025年4月号(通巻867号) 

 

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★「水温む」      対馬康子(5句)

 

流氷を割って戦後がきしみ合う

 
★特別作品(各10句)

 

「滝の音」       綾野道江

 

短日のポストに届く濤の音

金色の嘴に朝の日引っさげて

 

「挨拶」        平山道子

 

木の芽雨ひとりの皿のスープ澄む

月おぼろ手櫛の髪の静電気

 

​★地熱深耕   地熱集より対馬康子選

 

闇黒の銀河の裾野病んでいる   東 圭子

何処へと行くや枯野を分母とし  林 厚夫

唇の影持つこともポンセチア   坂田晃一

 

★令和7年「麦新年句会」

 

令和7年1月13日   於・北とぴあ カナリアホール

 

○句会高点句

凩哭く村を壊さぬように哭く   森田千技子

小春日や善良そうなメロンパン  大川悦子

瀧音を貼り付けたまま初写真   田中朋子

 
​★踏生集   同人自薦作品5句
 
​★原生林(俳句教室)  斉田 仁 選
 
「朝のリレー」詩人のバトン受くる冬  青田奈央
 
★誌上句会・・・四人の選者が交代で読む・選ぶ
 
​選者   赤峯友子
テーマ「一」
 
一隅に襦袢一枚年の夜     町田博嗣
青春の一番底にある枯野    見岡ゆみ
一の名を付けた長男冬田打   坂本洋子
 
 
その他
 
 
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俳句雑誌『麦』2025年3月号(通巻866号) 

俳句雑誌『麦』2025年3月号(通巻866号) 

 

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★「凍滝」       対馬康子(5句)

 

吉原の多差路を冬の金魚かな

 
★特別作品(各10句)

 

「俳句莫迦」      五代儀幹雄

 

四股踏めばほぐれる右脳秋ですね

糸瓜の水のんで辞世の句を詠まず

 

「昭和」        松岡耕作

 

裸木になって伐るべき枝が見え

八月の奥に居すくむ昭和かな

 

​★地熱深耕   地熱集より対馬康子選

 

蛇穴に入るまなぶたの無き埴輪 小野富美子

木枯一号この星もまた小石   鋤柄杉太

ゆく秋の耳たぶの厚みに耐える 早川浩

 

★第72回「麦」全国大会

 

令和6年10月6日〜8日

   於・滋賀県 びわ大津プリンスホテル

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対馬康子会長、元気に語っている!

 

大会初日は、麦の作家賞、新人賞、収穫祭第1位の表彰などが行われたのち、事前投句の俳句大会。特別選者の講評ののち、成績上位者に賞品の授与。

 

○俳句大会高点句

読点の打ちどころなき大夏野   綾野道江

大声のベンチの補欠夏終る    加藤弥生

シュレッダー詰まる憲法記念の日 潮 仲人

 

二日目、琵琶湖周辺をを観光バスで巡る。吟行句をその日中に投句する。

三日目、吟行句会で締めくくる。

 

○吟行句会高点句

観音の耳朶の含蓄秋思とも    松末充裕

観音の秋思とけこむ暮の湖    東 圭子

冷やかや淡海は闇に息をする   川守田美智子

秋晴の琵琶湖を釣っているという 鋤柄杉太

 
​★踏生集   同人自薦作品5句
 
​★原生林(俳句教室)  斉田 仁 選
 
滝涸れて顔の中まで静かなる   早川浩
 
★誌上句会・・・四人の選者が交代で読む・選ぶ
 
​選者   林 厚夫
テーマ「回路」
 
徘徊に思い出回路ゆく小春    小野富美子
迂回路をぽくぽく来たり白鳥座  瀬尾あき子
堂々巡り日毎痩せゆく窓の月   中村安子
 
 
その他
 
 
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