麦『収穫祭』第1位
グーテンベルクの肺活量 尾内以太
菜の花はフランス装の詩集かな
春の風二ページ分を読み捨てる
うららかにひねりだされる人工語
どうだんのはな保育士は朗読す
ぶらんこをとびおり中つ国へゆく
積読の書籍を風呂へ小鳥の巣
原作は鶯餅の上下巻
春の風邪よみたい無料記事はある
梅雨晴の図書館を突く三輪車
歩く辞書辱暑の紙は手に鳴りて
早苗田のうらがわという発禁書
「この人を見よ」を水着に挟みけり
金魚という枕頭の書の吐息かな
記録より記憶へ響く滴りは
さわやかに鳥のかたちをした書物
全歌集の三つ編みしおり星流る
閉じられる絵本へすべりこむ小鳥
蛇穴に入る仮名がけは読める児も
掌編の結末へ触れ赤とんぼ
うろこ雲推薦図書を買いそろえ
柿熟れて音は活版印刷所
月光を濡らしとびだす絵本かな
スピノザの書簡を握る黄落期
冬館あしおとはみな隠喩なり
冬ざれておのずとひらく鈍器本
動詞はさざんかのしろと散り急ぐ
よみきかせの道づれはぐれ浮寝鳥
しろい息最終章は黙読す